目を閉じたら、
潮の匂いがひときわ強く感じられた。

波が打ち付けられて舞い上がる音。

水しぶきがここまで飛んでくる。


生ぬるい銀色の手すりを掴む手が、汗ばんでいるのに気が付いた。


怖くない、怖くなんかない。

きっと一瞬だから。

一瞬で終わるから。


死ねば、楽になれるはずなんだから…