背の高い下駄箱が並ぶ薄暗い昇降口で、注意深く靴を出す。

しっかり見ないと画鋲も小さないたずら書きも見落としてしまうから。


[浜口祈梨]と書かれた下駄箱のフタを、静かにそっと持ち上げる。

古びた分厚い木の板は画鋲よりも刺さりそうで危ない。

そして上履きはショートケーキをトングで挟むみたいにして、片方ずつ脇を持って引き出す。

ハイ、画鋲さん発見。

かかとの内側に、両面テープで貼ってある金色に光る物体を取り除いて、くずかごに投げ込む。

そこに指を差し込んで持ったらチクリとなる予定だったのだろう。

誰か見てないか?ってコソコソしながら準備したんだろうなと思うと、馬鹿みたいで少し可笑しい。

朝も似た感じだから、きっとこのために早くから登校するんだよ、ホントすごいよ。

でも、もういい加減にしてくれないかな。