「えっ、首元……?」

「赤くなってるよ?」


不思議そうに首をかしげて近づいてくる。

私は一瞬ぽかんとしたけど、少し考えれば「もしかして」と思い当たるものがあり、慌てて手のひらで隠した。


「そうそう。昨日、虫に刺されたんだよね。かゆいなって思ってたんだ、ほんとやだ~」


ベタな言い訳だけどあっさり信じてくれて安心する。

トイレに行くふりをして、洗面台に立った。


鏡に映る自分の首すじ。

赤く染められた部分が、二つ。


指でなぞると、じんと甘く痺れる感覚がした。



──響平。
こんなの、いったいいつの間に……?


髪を束ねていたから見えてしまっただけで、いつも通り髪を下ろしていればきっと目立たないし、制服を着てしまえば隠すことはできるはず。


ふう、とため息をついた直後、美月ちゃんの近づいてくる足音がして、結んでいた髪を慌ててほどいた。


水道のバーをひねって、顔を洗っていたふりをする。