うう、この会話の流れはまずいかも。


──確かに最初は私もそう思ってた。

大人たちが言うほど危なくないって甘く見てて、だから1週間前にもひとりで暗黒街に簡単に行けた。

あちらこちらで光るネオン、助けてくれない人々、月がない真っ黒な景色……。


いやな記憶がよみがえる。



「実は、昨日寮の子たちと話してたんだ~。今度の週末は、みんなでコッソリ暗黒街行こうよって」

「……っ!」


 絶対だめ……!


「学校にバレたらどうなるかわかんないし、もう行かないほうがいいよ。絶対」

「う~ん。でもウチの校則ってけっこうゆるいし、大丈夫だよきっと! それに、寮の子もめっちゃ行きたいって言ってたもん」


箱入り娘の美月ちゃんは、自分が知らないことに対して人一倍好奇心旺盛で、火がつくと止められなくなる。



「いくら校則ゆるくても、美月ちゃんのお母さんとかが聞いたら、びっくりして倒れちゃうよ!!」

「それはそうだけど~。……って、あれ?」


美月ちゃんが、ふと私を見て、目をぱちくりさせた。


「瑠花ちゃん、その首元どうしたの?」