「……は」


抵抗をやめた響平の表情が曇った。



「……わかったから手ぇ放せ。ちゃんと行く。その代わりお前が、瑠花を出口まで送ってやって」

「お前がバックレたら俺までヒドイ目に遭うんだけど」

「迷惑はかけねぇよ。それよかマジで瑠花のこと頼んだぜ。変な虫つけたら殺すぞ」


「怖っ」と身震いしてみせ、泉くんは私に向き直る。



「じゃあ行こっか、瑠花ちゃん」

「あっ、はい……」



そう返事をしながらも、響平のことが気になってしかたない。

どうやら誰かに呼ばれてるみたいだけど、こんなに暗い顔をするということは、よほど苦手な相手なのかな。



忘れなきゃ、という気持ちとは裏腹に目は最後まで響平を追ってしまう。



「泉」

「んー?」

「夜まで出てこれねぇかもしんないから、そんときは水やっといてくんね?」

「ああ。りょーかい」


泉くんの返事を確認すると、響平はそのまま背を向けてしまった。