これ以上惑わせないでほしいのに、どうしてそんなことを言うんだろう。

長くそばにいればいるほど、別れが惜しくなってしまうのに。



「同じ寮の美月ちゃんに心配かけちゃうから」


昨日の電話で中学の友達と会ったって言っちゃったから、これ以上嘘を重ねるわけにはいかない。


響平は少しのあいだ黙りこんだあと、再び口を開いた



「あのさ。その“ミヅキちゃん”って──」

「響平!」


直後、男の人の声がセリフを遮る。


振り返ると、銀髪の
──確か、泉くんという人がこちらに向かって走ってきた。



「休日の朝から外でなにやってんの。探したぜ~?」


そう言いながら響平の首根っこをつかんだ彼は、私たちが向かっていた先とは反対方向に引っ張っていこうとする。



「ちょい待てよ。俺は瑠花を送っていってんの。見りゃわかんだろ」

「んなこと言ってる場合じゃないんだって。あの人が、お前のこと探してる。摩天楼にいないって大騒ぎしてた」