正直に口にして恥ずかしくなる。


どうせこの街の人のことだから、そんなの知ったことじゃないだろうし。

立てないなら
このまま見捨てられるんだろうって……思った、のに。



「なんだ。やっぱ立てねぇんじゃん」


なんの躊躇いもなく差し出された腕を、ぽかんと見つめてしまう。


……え?



またも固まった私を、痺れを切らした彼が強引に引き上げた。
ふわり、シトラス系のいい匂いに包まれる。

私に触れる大きな手を見て、ドク……と心臓が跳ねた。



「街の出口までの道わかるか?」

「出口までの道……?」



わからないけど。

嘘……。
まさか、案内しようとしてくれてるの?



「あんた、あの男たちに攫われてここに来たんだろ?」


そう問われてハッと思い出す。

本来、自分がこの“暗黒街”に訪れた目的……。