じゃあ響平は、最初からこの街にいたわけじゃなかったんだ。



「今はこの部屋に住んでるの?」

「主にな。ここでも寝るし、倉庫にも俺の部屋はある。あとはクラブの2階とか。まあ、そのときどきって感じだな」


「そっか」

「で、お前は? 寮生活なんだっけ?」


「うん」

「へえー、楽しそ」


そこで一旦、響平は瞼を伏せた。

沈黙が流れて、妙な緊張感が体を支配する。



「え、ええと。響平は、なんでこの街に来たの……?」


なにか言わなきゃと思って、深く考えることなく口にした、純粋な疑問。

響平は、「あー…」と斜めに目をそらす。


聞いてはいけないことだったのかもしれない。



「あ、あの。そういえば、響平は……えっと、」