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1週間前、初めて訪れた場所。

何も知らない、この街のこと。

私の頭を優しく撫でる、この人のことだって──。




「お前どこの高校?」


膝を抱えて座る私の髪をもてあそびながら響平が聞いてくる。

私の顔をのぞきこむたびに、さらりと流れる黒髪が綺麗。

ときどき目を細めて笑う表情に胸がキュ、と狭くなる。



「私は南高だよ」

「へえ。わりと近いじゃん」


「そうだね」

「けど、よく来たな。暗黒街には来るなってうるさいだろ。特に大人」


「うん。生まれたときから、絶対近づいちゃだめだって言われてた……」

「だろうな。俺もそうだったし」



思わず響平を見る。

俺も、って……ことは。



「俺も、もとは‟外”の人間だった。つってもすげぇ前のことだし、あんま覚えてないけど」