エレベーターが停止して扉が開く。

廊下が暗いのは変わらないけれど、入ってきたときよりも心なしか空気が緊迫している。


横目で響平を見るとスマホを操作していた。



「なあ泉。このデータ信用できんの?」

「さあ。けど面白いし、ネタとしては使えるんじゃない」

「ネタは足りてんだよなあ。金に変えるか?」

「西の情報屋は高く買ってくれるって噂だぜ」



慣れない土地。

ほぼ知らない人たち。

わからない世界の会話。


今さらながら怖気づいてしまう。

やがて辿り着いた角部屋の入り口付近には、大きな旗が掲げてあり、
そこには黒地に金糸で【麗然会】と刺繍が施されていた。



──れいぜんかい。

背中にゾクリと寒気が走った。