慣れないことをされてドキッと胸が高鳴るものの、これは、付き合っていると嘘をつくためにやっていること。


きっと演技だ。



「ルカちゃん、けっこう純情そうだけど大丈夫なんか?」

「たまにはこーいうのも可愛いだろ」



肩から上ってきた手が髪に触れて、くしゃっと撫でる。

私を見下ろして、にこ、と一瞬だけ笑ってみせる響平。

これも演技なのに、それだけで首から上があっという間に熱を持った。


テキトウ、って感じ。雑ではないけど、特別優しくもない。

泉くんが歩き出して、私は響平にうながされるままついていく。


エレベーターに乗ると、泉くんが【17】のボタンを押す。
ぐっと重力を感じたあと、ゆっくり上へと動き出す。


「瑠花」

ふいに響平が私の名前を呼んだ。


見上げる。


「俺から離れんなよ」


私の目を見ないまま、そんなことを言う。

やっぱり棒読みで、少し笑ってしまった。