ネックレスに触れていた手がゆっくりと離される。

震えた吐息が聞こえた。



「響平を街の外に出さないのは、あの子の命が狙われているからだ。響平が鑑別送りになった案件で、警察がガサ入れして組がひとつ潰れていてね。
死んだことになっていても、探し続けている輩が山ほどいる。うちのシマ――暗黒街の中にいる限りは安全だから、せめてほとぼりが冷めるまでは、この街でどうにか守ってあげたいんだ」



 話を聞いていると、少しずつ事情が理解出来てきた。



「まさか、あの日響平を撃った……のも、守るために……?」


 苦笑いを向けられる。


「自分の息子に会う日が来るとは思わなかったよ。彼女が妊娠していることしか知らなかったのに、2年前、初めて見たとき、名前をたずねる前に、なぜか響平だとわかった。……あの子は母親似だ」


そう言って切なげに笑う。