「お願いします。響平に、本当のことを全部話してください……。あなたのことを誤解したまま生きるほうが、きっと苦しいはずです」
大事に想われていることに、気づくことができたなら響平はきっと、この人を父親として受け入れる。
同じだけの気持ちを返してくれるはず。
もう一度「お願いします」と頭を下げれば、おもむろに手が伸びてきて。
「君が──、」
指先が、私の首にかかったチェーンにそっと触れる。
「君が持っていたのか」
「……え?」
「そのネックレスは、僕が友美に──当時、恋人だった女性に唯一プレゼントしたものなんだ」
目の前の瞳がわずかに揺れ、心がジン…と熱を持った。
「僕はもとより、薄汚れた街の生まれで、さらに法に触れるようなこともやってきた人間だ。彼女は反対に、上品で裕福な家庭の娘だった。若かったから止められなかったんだ。
茨だとわかっていても、共に生きていたかった……。彼女は両親の猛反対を振り切り僕と逃げて、……結局、響平が生まれる前に、彼女を失うことになった」