「安心しな。ちょっと時間経って、俺が別れたって言えば、スグなかったことになるからな」


つまりそういうこと。

私が無事に帰れるように、期間限定で嘘をついてくれるらしい。



再び路地に入る。

こっちが近道なんだ、と響平が言った。



「で、あんた何歳?」


これも、一応知っておかなければいけないと思うから聞くだけで、特に意味はない質問なんだろう。


「……16」

「マジ? いっこ下か」


「あ、でも、今年で17になる……」

「へぇ。じゃあ今高2? なんだ、タメじゃん」



事務的な会話とはいえ、意外にもよく喋る人で驚いた。

もっと寡黙なイメージがあったから。


響平は歩きながら振り返った。


「速いか?」


速いけど。
響平は急いでいるんだから文句は言えない。


首を横に振ると、さらりと私の手をとって。



「悪いけど急ぐ。……それに、まあ、こっちのがコイビトっぽいだろ」


あまりに自然な動作に、
反応することも忘れて手元を凝視してしまった。