今夜、最強総長の熱い体温に溺れる。 - DARK&COLD -



振り向いた先に、黒い人影があった。


──誰?

──いつの間に?



緊張が不安に切り替わった。



「こんなところにいたのか。響平君」



隣で息をのむ気配がして、只事じゃないことを悟った。


響平が私を隠すように前に立つ。

相手の姿は見えないけれど、さびを帯びた声から年上の男性だとわかる。



穏やかな口調の中にぞくりとする冷たさがあった。



「最近、また脱走するようになったかと思っていれば、外に女ができたそうじゃないか」


影が一歩ずつ詰め寄ってくる。

響平は何も言わない。

ここからだと顔も見えない。



「自分が外に出ることが、どれだけの危険を伴っているかわかってるのかい? ……響平君」


相手は煽るように低い声で名前を呼んだ。


響平は黙ったまま相手に近づいた。



その直後、バンッ、と短い爆発音が響いた。

いったいなんの音なのか、判断する暇もなく響平が

足元から崩れ落ちる──。



景色が、やけにゆっくりと流れた。