「出るなよ」
ドキッと心臓が跳ねる。
「でも、緊急の用事かもしれないし」
「……んなの知らねぇ……」
つかむ手に力がこもった。
迷っているうちにコールは止み、一時の沈黙。
「で。もっかい聞くけど、何したい?」
話したり、散歩したり、景色を眺めたり。響平が隣にいればそれだけで嬉しい。
そう伝えようとして、あることを思い出す。
以前、響平に会ったとき、結局できなかったことがある。
「響平の……花壇が見たい」
遠慮がちに見上げると、黒い瞳が柔らかく細められた。
「わかった。その代わり今日はもう、いきなり帰るとか言うなよ」
手を引かれながらゲストルームをあとにした



