「……あの、すみません。ありがとうございました」


慌てて頭を下げる。


「そーいうのいいから」


そう言うと、彼は足元に転がっていた小石を拾って、地面に何かを書き始めた。



「あれか? 俺が名乗らないから言いたくねぇってこと?」

「っあ、いや、そういうんじゃ……」



私が否定しているうちに書き終えたらしい。



砂の上に記された文字。

──『夕立 響平』



「ゆうだちきょうへい。響平でいい。あと、付き合ってる設定なのに敬語はおかしいからやめろ」



夕立……。

珍しい名字だと思いつつ、急いでいるようだから口には出さず、こちらも速やかに名乗ることにする。



「私は、旗中瑠花……」

「はたなか……何?」


「はたなか、るか」

「るか?」


「……うん」

「漢字は?」


ん、と持っていた小石を手渡された。

ぎこちない手つきで受け取って、名前を書く。