周りから人が去ったあと、彼は、呆然としていた私の腕をとった。



「わりぃ。あれ、最近うちの組織に入ってきたやつらなんだよ。けど、お前も学習しねーなあ」


小さな舌打ちが聞こえた。


「もう時間がない。ちょっとこっち来い」


手を引かれるままついていく。


狭い路地に入って、一回、二回、三回と曲がった先に小さな公園があった。


彼がしゃがみこむと、繋がれていた私も必然的にその場に腰を下ろすことになる。



「あんた、名前は?」


“お前”から“あんた”に変わった。

そんなどうでもいい変化に反応してしまう。



「……え?」

「名前だよ。流れで俺の女ってことにしちまったんだから、名前くらい知らねぇとおかしいだろ」


言われてはっとする。

そうだ。助けてくれたんだ。