北村さんは、「ちょっと待ってて」と言い、自分の家のほうへ走っていってしまった。


待つこと3分ほど。



戻ってきた北村さんが手にしていたものを見てびっくりする。



「あれっ? それ、私が中学のときに使っていた傘……?」


お気に入りだった水色の傘。

どうして北村さんの家に……。



そう思って記憶を辿ると、雨の日の、ある光景がよみがえった。



「……あ。そういえば、前に病院の前で雨宿りしてる人がいて……傘を、貸したような気がする……」

「そうそう! その男の子が、瑠花ちゃんが寮に入った1カ月後くらいに病院に来たのよ、この傘を持ってる女の子に心当たりありませんか?って。それで、私が預かっておいたのよね」