恐怖のあまり呼吸は乱れ、体も指先まですっかり冷え切ってしまっていた。



「おい、聞いてんのか?」

「…………」

「黙ってねえで何とか言えよ!!」

「っ、ごめんなさい」



少しでも気を抜いたら足元から崩れ落ちてしまいそう。

早く歩けと言われても、力が入らないんだからどうしようもない。



「ほら、こっちが近道だ。来い」



再度腕を引かれ角を曲がると、急にひと気がなくなった。

閑散とした裏路地をビル風が冷たく吹き抜ける。


誰か助けてくれるかもという淡い期待は完全に打ち砕かれた。
 
大通りを歩いているときでさえ、通行人は誰ひとりとして見向きもしなかったんだから……。