「じゃあごゆっくり」
もう一度お辞儀をして部屋を出ていく。
礼儀正しさに関心すると同時、違和感のようなものを覚えた。
いくら響平に任されたからって、初対面で私に「遊ばない?」と声を掛けてきたときとあまりに違う。
年齢も3歳差でたいして変わらないのに、こんなに腰を低くする必要はあるんだろうか。
礼儀正しいのはもちろんいいことだけど、椿くんをそう“させている”力がどこかで働いているんじゃないかと。
そんな考えが頭に浮かんでしまった。
響平の指示だから……ということじゃなく。
たとえば、この建物──この組織の中にいるから、こうしなくちゃいけない……とか。
「旗中?」
国吉くんの声でハッと我に返る。