「響平は、煙草吸ったりするの?」


正直、泉くんが煙草を吸うのはびっくりしたけどこの街ではたぶん、法律なんてあってないようなもの。


「俺? やんねぇーよ。けど付き合いってもんがあるし、誘われたら、そんときは……って感じだな」



たしかに、響平の体から煙草の苦いにおいを感じたことはないな。
そう思ったとき。



「瑠花。先に戻っとけ」

「え?」

「俺は傘取ってくる。すげぇ降ってんだろ」



私の返事も待たずに、分かれた廊下を曲がっていく。


闇に消えた背中を見送って、美月ちゃんたちが待っている入り口へ向かった。

貸してもらったタオルをふたりに渡すと、その数秒後にはスマホを持った響平が現れた。



「俺はちょっと外出てくる。そこの階段上った奥の部屋で待ってろ。2階に椿待たせてっから。……瑠花は椿のことわかるだろ」