「にしてもすげぇーわ。初めて打たれたときは意識から根こそぎ持ってかれてただろ。あんとき俺、響平が死ぬんじゃねぇかって本気で思ったんだぜ。毒は数重ねると耐性つくってホントなんだな」



住む世界が違うことはわかっていても、日常の基準がここまで違うと話についていくのは難しい。



「俺は超~マジメだから見つかってもいーけど。お前は前科がありすぎる」



泉くんがわざとらしい長いため息をついた。

その直後に、一瞬だけ、凍りつくような厳しい目を向けた──のは、きっと見間違いなんかじゃなくて。



「もう俺は助けてやれないぜ、元脱走犯くん」


ずっと口元に笑み残していた響平からも、ふと表情が消え。


「わかってる」

低い声と同時に背中を向けた。



「あ、響平……」


このまま振り向いてくれないのかと思い、無意識に引き止めると、案外あっさりと足を止めてくれた。


「あー、そうだ。ちゃんと寝ろよ。疲れただろ」


私に向かい合って、頭にぽんと手を乗せてくる。