鼓膜を揺する低い声。

いやに冷静な横顔は、冗談を言っているようには見えず。
胸を突き刺されたような衝撃が走る。



それでも、すぐに信じられるわけもなく、思わず乾いた笑い声がもれた。



「なにそれ……。意味わかんないよ」


表情がひきつる。


「夕立響平って男は、2年前に死んでる」

「……え?……なに、言ってるの?」



『俺も、もともとは外の人間だった』

響平のセリフが脳裏をよぎる。



まさか、私が会っていたのは幽霊だとでもいうのだろうか。

そんな、非現実的なこと──。




「死んだ……‟ことになってる”」



信号が青に変わっても、私たちは踏み出せなかった。



「あいつは……あの街に、金で買われたんだ」