国吉くんの力に流されるまま足が動く。


その直後。
もう一方の手をつかまれて、びくりと肩が上がった。


どこかぎこちない触り方で、
それでも、決して離そうとはしない力強さ。



「瑠花、」


その声が私の名前を呼ぶだけで、胸の内側が火傷してしまうんじゃないかというくらい熱くなる。

驚きで声も出ない私の代わりに、国吉くんが響平の前に回りこんだ。


「なんだよ」


響平は顔色一つ変えないで言う。


「1時間後にはちゃんと店に帰す」

「は?」

「だから、瑠花のこと貸して」

「いきなり何言って、」

「大丈夫。大事にする」



次の瞬間には、響平の腕の中にいた。

ほのかなシトラスに包まれる。

そして、背中に回った手が、さらに細い路地へと私をうながした。