第3話 かおり、絵本を作る
お話が少しそれたから、もとに戻すけど、かおりちゃんが学校でいじわるをされていたとは思わなかったなあ。
これは絶対にほうってはおけないぞ。
いつかぼくは絵本の中から抜け出して、かおりちゃんについて、学校に行ってやろう。
そして、かおりちゃんをからかっている男の子がいたら、頭にかぶっているぼうしを吹き飛ばして、高い木のてっぺんに、ひっかけてやろう。
いじわるをしている女の子がいたら、スカートをめくってやろう。おっと、これは、はしたないか。ごめん。
何しろ、ぼくは男の子だし、ぼくのお話を書いてくれた人も、夢都(むつ)さんというよりも、むっつりさんといったほうが似合っているように思える、むっつり何とかさんみたいなおっさんだから、そんな人から生まれたぼくも、時々、エッチなことを考えたりすることがあるんだ。
でも作者は、お酒を飲んだときなど、羽目をはずすことがあるけど、ぼくはお酒は飲まないし、においもかがないので、どんなときでも羽目をはずさないので、女の子のスカートをめくるようなことは絶対にしないよ。
でも、かおりちゃんにいじわるをする女の子がいたら、ほうってはおけないから、その女の子に何か、いたずらをしてやろうと思っているんだ。
ぼくは、ウルトラマンのような正義の味方だから、悪いことをする子は絶対に許せないんだ。
(そうだなあ、何をしようか……)
あっ、そうだ。いいことを思いついた。
かおりちゃんにいじわるをしている女の子がいたら、冷たい風をびゅんびゅん、その子にだけ強く吹きつけて、風邪をひかせてやろう。
その子が風邪をひいて学校を休んだら、かおりちゃんに悪口を言おうと思ってもできないだろうからね。
いい考えでしょ ? 何 ? よくないって ? いいんじゃないの、それくらいの罰を与えても。
かおりちゃんだけではなくて、ぼくのことをほめてくれた、かおりちゃんのおかあさんのことも、ぼくは悪いやつから、しっかり守ってあげるよ。
たとえば、ぼくの絵本の中に出てくる猫のように、しつっこいやつがいて、かおりちゃんのおかあさんに、ストーカーみたいに、うるさくつきまとってきたら、そのオトコを川の中まで吹き飛ばして、体じゅう、ずぶぬれにしてやるぞ。
美女につきまとうのだから、びじょびじょになったらいいんじゃない ?
想像しただけでも愉快になってきたなあ。
ぼくが、かおりちゃんの家に着いたのは金曜日だったので、その翌日は、もちろん土曜日だよね。その土曜日の朝、かおりちゃんが、おかあさんといっしょに、ぼくや、ぼくといっしょに運ばれてきたシールを、居間のテーブルの上に並べて、あれこれ、見比べたりし始めたんだ。
(何をしているのだろう ?)
と思って、見ていたら、かおりちゃんが、おかあさんの言う通りに、シールを一枚、一枚、ていねいに、はがしてから、ぼくの上に貼っていったんだ。絵ではなくて、文字の上に貼っていたよ。
「かおり、これはね、カンボジアという国の人たちが使っている文字よ。この本はね、これから船に乗って、カンボジアという国に運ばれていって、カンボジアの子どもたちにも読んでもらえることになっているのよ」
おかあさんが、そう言ったので、
(なるほど、そういうわけだったのか)
と思って、ぼくはこのとき初めて、ぼくといっしょにレターパックの中に入れられていたシールが何だったのかが分かったんだ。
(わあ、ぼくはこれから船に乗って、外国に行くのか。カンボジアって、どういう国だろう。カンボジアでも、かおりちゃんや、かおりちゃんのおかあさんのように、やさしい人がぼくを手に取って、読んでくれたらいいなあ)
ぼくはそう思って、心をゴムまりのように、はずませていた。
かおりちゃんがシールを全部、ぼくに貼りつけると、かおりちゃんのおかあさんが、ぼくの裏表紙の内側に、かおりちゃんの名前をローマ字で書いて、その横にサインペンで、かおりちゃんの似顔絵を描いてくれた。
かおりちゃんのおかあさんは、絵を描くのが、とても上手なので、ぼくはびっくりしちゃった。似顔絵の目鼻立ちが、かおりちゃんの顔にそっくりだったんだもの。
「さあ、これで出来上がりよ。月曜日の朝、おかあさんが郵便局に持って行って出しておくわね」
かおりちゃんのおかあさんが、ぼくを手に取って、たんぽぽのように、にっこり笑っていた。
「ねえ、かおり、明日は久しぶりに佐賀へ行って、デパートのレストランでお食事をしない ? パパもいっしょよ」
かおりちゃんのおかあさんがそう言ったので、かおりちゃんは、いかにもうれしそうな顔をしていた。
「わぁ、本当 ? パパといっしょに佐賀へ行けるなんて、本当に久しぶりだわ」
「そうねぇ、いつ以来かしら……」
おかあさんも、すぐには思い出せないでいるみたいだった。
「パパは土曜日や日曜日もクラブ活動の指導で、家にはいないことが多いからね」
「そうねぇ……。でも私もたまには、ほかのうちの子と同じように、パパといっしょに、いろんなところに遊びに行ったり、お食事に行ったりしたいなぁって、ずっと思っていたの」
かおりちゃんが心の中に思っていたことを正直に話したので、かおりちゃんのおかあさんは、申し訳なさそうな顔をしていた。
「パパもそのことをずっと気にしていたみたいよ。『かおりをどこにも連れて行けなくて悪いなぁ』って、いつもママに言っていたから。でも明日はいいわ。けさ出かけるときに、明日はクラブ活動の指導には行かないと、パパが言っていたから。明日は一日じゅう、パパといっしょにいられるわよ」
かおりちゃんのおかあさんも、うれしそうだった。
お話が少しそれたから、もとに戻すけど、かおりちゃんが学校でいじわるをされていたとは思わなかったなあ。
これは絶対にほうってはおけないぞ。
いつかぼくは絵本の中から抜け出して、かおりちゃんについて、学校に行ってやろう。
そして、かおりちゃんをからかっている男の子がいたら、頭にかぶっているぼうしを吹き飛ばして、高い木のてっぺんに、ひっかけてやろう。
いじわるをしている女の子がいたら、スカートをめくってやろう。おっと、これは、はしたないか。ごめん。
何しろ、ぼくは男の子だし、ぼくのお話を書いてくれた人も、夢都(むつ)さんというよりも、むっつりさんといったほうが似合っているように思える、むっつり何とかさんみたいなおっさんだから、そんな人から生まれたぼくも、時々、エッチなことを考えたりすることがあるんだ。
でも作者は、お酒を飲んだときなど、羽目をはずすことがあるけど、ぼくはお酒は飲まないし、においもかがないので、どんなときでも羽目をはずさないので、女の子のスカートをめくるようなことは絶対にしないよ。
でも、かおりちゃんにいじわるをする女の子がいたら、ほうってはおけないから、その女の子に何か、いたずらをしてやろうと思っているんだ。
ぼくは、ウルトラマンのような正義の味方だから、悪いことをする子は絶対に許せないんだ。
(そうだなあ、何をしようか……)
あっ、そうだ。いいことを思いついた。
かおりちゃんにいじわるをしている女の子がいたら、冷たい風をびゅんびゅん、その子にだけ強く吹きつけて、風邪をひかせてやろう。
その子が風邪をひいて学校を休んだら、かおりちゃんに悪口を言おうと思ってもできないだろうからね。
いい考えでしょ ? 何 ? よくないって ? いいんじゃないの、それくらいの罰を与えても。
かおりちゃんだけではなくて、ぼくのことをほめてくれた、かおりちゃんのおかあさんのことも、ぼくは悪いやつから、しっかり守ってあげるよ。
たとえば、ぼくの絵本の中に出てくる猫のように、しつっこいやつがいて、かおりちゃんのおかあさんに、ストーカーみたいに、うるさくつきまとってきたら、そのオトコを川の中まで吹き飛ばして、体じゅう、ずぶぬれにしてやるぞ。
美女につきまとうのだから、びじょびじょになったらいいんじゃない ?
想像しただけでも愉快になってきたなあ。
ぼくが、かおりちゃんの家に着いたのは金曜日だったので、その翌日は、もちろん土曜日だよね。その土曜日の朝、かおりちゃんが、おかあさんといっしょに、ぼくや、ぼくといっしょに運ばれてきたシールを、居間のテーブルの上に並べて、あれこれ、見比べたりし始めたんだ。
(何をしているのだろう ?)
と思って、見ていたら、かおりちゃんが、おかあさんの言う通りに、シールを一枚、一枚、ていねいに、はがしてから、ぼくの上に貼っていったんだ。絵ではなくて、文字の上に貼っていたよ。
「かおり、これはね、カンボジアという国の人たちが使っている文字よ。この本はね、これから船に乗って、カンボジアという国に運ばれていって、カンボジアの子どもたちにも読んでもらえることになっているのよ」
おかあさんが、そう言ったので、
(なるほど、そういうわけだったのか)
と思って、ぼくはこのとき初めて、ぼくといっしょにレターパックの中に入れられていたシールが何だったのかが分かったんだ。
(わあ、ぼくはこれから船に乗って、外国に行くのか。カンボジアって、どういう国だろう。カンボジアでも、かおりちゃんや、かおりちゃんのおかあさんのように、やさしい人がぼくを手に取って、読んでくれたらいいなあ)
ぼくはそう思って、心をゴムまりのように、はずませていた。
かおりちゃんがシールを全部、ぼくに貼りつけると、かおりちゃんのおかあさんが、ぼくの裏表紙の内側に、かおりちゃんの名前をローマ字で書いて、その横にサインペンで、かおりちゃんの似顔絵を描いてくれた。
かおりちゃんのおかあさんは、絵を描くのが、とても上手なので、ぼくはびっくりしちゃった。似顔絵の目鼻立ちが、かおりちゃんの顔にそっくりだったんだもの。
「さあ、これで出来上がりよ。月曜日の朝、おかあさんが郵便局に持って行って出しておくわね」
かおりちゃんのおかあさんが、ぼくを手に取って、たんぽぽのように、にっこり笑っていた。
「ねえ、かおり、明日は久しぶりに佐賀へ行って、デパートのレストランでお食事をしない ? パパもいっしょよ」
かおりちゃんのおかあさんがそう言ったので、かおりちゃんは、いかにもうれしそうな顔をしていた。
「わぁ、本当 ? パパといっしょに佐賀へ行けるなんて、本当に久しぶりだわ」
「そうねぇ、いつ以来かしら……」
おかあさんも、すぐには思い出せないでいるみたいだった。
「パパは土曜日や日曜日もクラブ活動の指導で、家にはいないことが多いからね」
「そうねぇ……。でも私もたまには、ほかのうちの子と同じように、パパといっしょに、いろんなところに遊びに行ったり、お食事に行ったりしたいなぁって、ずっと思っていたの」
かおりちゃんが心の中に思っていたことを正直に話したので、かおりちゃんのおかあさんは、申し訳なさそうな顔をしていた。
「パパもそのことをずっと気にしていたみたいよ。『かおりをどこにも連れて行けなくて悪いなぁ』って、いつもママに言っていたから。でも明日はいいわ。けさ出かけるときに、明日はクラブ活動の指導には行かないと、パパが言っていたから。明日は一日じゅう、パパといっしょにいられるわよ」
かおりちゃんのおかあさんも、うれしそうだった。