これが作り物だとすれば佐野君は相当演技が上手だと言う事になる。


あたしはゴクリと唾を飲み込んでモニターを見つめた。


溺れないように必死で立ち泳ぎをしている佐野君が、ふいに動きを止めた。


何かの気配を感じ取ったようにせわしなく周囲を確認している。


どうしたのだろう?


そう思った次の瞬間、佐野君の体は一気に海の中へと沈んでいた。


溺れて沈んだんじゃない。


まるで、何かに引きずり込まれたような……。


唖然としてモニターを見つめるあたしは、海が真っ赤に染まって行くのを見たのだった。