「……、さん、由香さんてばっ。起きて、こんな所で寝ちゃ風邪引くよ。眼鏡も掛けたままじゃん。」




体に揺れを感じてうっすら目を開けると愛しの彼が目の前に。

「ん…あれ、私、寝てた?」

どうやら晩ごはんを食べた後、ソファでうとうとしてしまったらしい。

「うん、なんか楽しそうな夢見てたよ。寝ながらニヤニヤしてた。」

言いながら私の隣にピタッと座る佐々木くん。

週末はこうして佐々木くんの部屋に来ては一緒に過ごす事が当たり前の日々。

4つも年下の彼に付き合う前は抵抗を感じたけれどいざ付き合い出すといつだって冷静な佐々木くんの方が余程落ち着いている。

頼もしい限りだ。

「なんの夢見てたの?」

「えっ、えっと…なんだったかな?」

まさかキミとオフィスでエッチな事をしてましたなんて言える訳がない。

「怪しいな。さてはーーー」

佐々木くんが私の腰を抱き寄せさらに密着してくる。

「夢の中でこんなことしてたんじゃないの?」

優しく唇が重ねられた。

「もぉ、佐々木くん…。」

照れ隠しに言うと目の前の彼の顔が急に不機嫌になる。

「はぁ…。由香さんさぁ、いい加減、佐々木くんは止めてよ。それにもうすぐ由香さんも佐々木になるんでしょ?」

そう、来月の私の誕生日に私は佐々木くんのお嫁さんになる。

職場の後輩だった佐々木くんがいつしか恋人となり…そして遂に彼のお嫁さんに…。

こんな日が来るなんて…思いもしなかった。

「ああ、幸せっ。」

つい、声に出てしまう。

「なに、それ。めちゃ可愛いんだけど。夢の続きーーする?」

そう言うとそのまま佐々木くんは私をソファに優しく押し倒した。

「んもぉ…」

そう言いながらも満更でもない。

直ぐに佐々木くんの背中に手を回す。

そして心の中でそっと願う。

次に目が覚めても今から始まる甘い時間がどうか夢じゃありませんように。

この幸せがいつまでもいつまでも続きますように。

再び、唇が重なる前に愛しの彼に囁く。

「ねぇ…」

「ん?」

「今夜は眠らせないでね、敦也…くん?」

「くんは余計でしょ?」

そう言って彼はくしゃっと笑うとそのまま私をぎゅっと抱き締め耳元で囁いた。



ーーー夢の続きする前に、この眼鏡、外さなきゃね。