気付いた途端、両手を顔で覆った。

そう、私は普段、伊達眼鏡を掛けている。

薄いレンズ一枚だけれど、その一枚で現実世界から我が身を守られている気がするから。

悪目立ちはしたくない。

実はクォーターの私、見た目には全く分からないけれど何故かアッシュグレーの瞳だけは祖父からきっちり受け継いでしまったらしい。

幼少期の頃、何かにつけてこの眼の色のせいで苦労をしてきた私は思春期に差し掛かった時、この術を見つけたのだ。

この薄いレンズ一枚で自分を守る術を。

早く眼鏡を掛けなきゃと顔を覆う両手の隙間から探してもデスク周りを見ても見当たらない。

あれ?

眼鏡…どこ?

すると、

「これですか?」

佐々木くんの手に眼鏡が…

「あっ、落ちてたかな?ありがとう。」

うつむき加減に仕方なく顔を覆っていた手を離しその手をそのまま差し出すとーーー

「ちゃんと見せてよ、先輩の顔。」

眼鏡を私の手が届かないところまでスッと上に上げてしまう佐々木くん。

「えっ、」

思わず顔を上げてしまった。

「やっぱり…、眼の色。」

ほら、まただ。

こうして私の眼を見る度に好奇の眼差しを向けてくる。

その度に私は息苦しくなる。

やはり苦手だとか言ってないで黒色のカラーコンタクトにすればよかった。

仕方なく佐々木くんに話した。

「ええ、祖父がロシア人なの。眼鏡返して貰える?」

早口で答えもう一度手を差し出すと

「やだ…って言ったら?」

「はっ?」

意味が分からないんだけど。

不信顔全開で佐々木くんをみると、

「俺…、ずっと見たかったんだ。先輩の素顔をーーー」