緑の風と小さな光 第2部

エイダは、セレの言う通りスヴィアの事がずっと気になっていた。

口にした『竜のルビー』の量が少なかったからか、エイダには感情と呼べるものが少し残っていた。

彼の家は、何代も前の先祖から王家に仕えていた。

ただの護衛だったのが「毒見役」になったのは、先王の時からだ。

昔からのスザールの身分制度を、先王が更に厳しいものにしたせいで、王の命を狙う者が出て来た。

毒殺も囁かれるようになった。

そこで、国王からの信頼が厚かったエイダの父親が「毒見役」に選ばれた。

しばらくの間は何も起こらなかった。

だが、ついに「その日」が来た。夕食に毒が仕込まれていたのだ。

いつも通りに「試食」を終え、40分程が経った時、エイダの父親は舌に痺れを感じた。みるみる内に全身に痙攣が起こった。

「陛下!お待ち下さい!」

彼は国王が料理を口に入れるのを止めようとした。

しかし、既に国王は何度かスプーンを口に運んでいた。

やや遅効性の毒だった。

毒見が済んでから、30分後に国王が食事を始める事を知っている者の仕業だった。

しばらくして、国王の身体にも痙攣が起こり、意識を失った。