緑の風と小さな光 第2部

そしてエルグは『裏切者』と呼ばれ、国を離れた。

その後は、狩人に捕まり見世物として売り飛ばされたり、情報屋に利用されたり、ろくな事は無かった。

「命を助けてくれたエルグに何の恩義も感じないのか?」

セレはスヴィアに訊いた。

「恩義?そいつは私を殺す為にこの城に侵入したのだ。元より敵だ。敵は倒さねばならん。」

「今は?俺達を敵と思うのか?」

「いや。殺気は感じられん。しかし危険な存在ではある。…特にお前はな。何せ『竜のルビー』が効かぬのだから。

エイダ。こいつを魔法使い用の牢に入れておけ。」

「はい。」

エイダは、返事をするのと同時にエルグに視線を向けた。

『またか』とセレはエルグから距離を取ったが

「あっ!」

エルグが羽交い締めにしたのはピアリだった。

「痛い!」

ピアリの腕がミシッ、と小さな音を立てた。

「貴様が何か魔法を使う素振りなど見せたら、彼女の腕を折らせるぞ。」

「……」

セレはエイダを睨んだが、大人しく言いなりになるしかなかった。

エイダに連れられて、地下牢への階段を降りた。

すぐ後ろにはピアリを抱えたエルグがついて来た。