奴隷の居住区で一夜を過ごし、翌日の朝に城へ向けて出発した。

セレ達がピアリを連れて逃げたりしないように、エイダは自分達の部屋にピアリを寝かせた。

おかげで、セレは全く眠れなかった。

それで憔悴するような事はないが、セレの目の下には薄っすらと隈ができていた。

エイダはそんなセレが不思議だった。

…彼の心配がピアリにとって何の役に立つのだろう?

心配なんて、しようがしまいが彼女の身の上に変わりは無い。

彼女に何もしないと言っているのに…無駄な気を使うものだ…

…いや…

自分にもそんな事があったような気がする…いつだったろう…

考えてみたが思い出せなかった。


半日歩いて、城が見えて来た。

崖の上に建てられた城塞だ。入る為の道は一本だけで身を隠すものは何も無い。ここを通る者は、城壁の見張り台からは丸見えだ。

エイダの姿が見えると、門番は重たい門扉を開いた。

門をくぐると衛兵達が敬礼で出迎えた。

彼等の労をねぎらいもせず、エイダは城に入った。

セレ達を連れて、スヴィアの部屋に行った。

「スヴィア様、ただ今戻りました。」

「…ご苦労。何か変わった事はあったか?」