緑の風と小さな光 第2部

闘奴は別の居住区に住まわされる。

一人ひとりに小屋が与えられ、それぞれに看守が付く。

家族も同居が許されるが、つまりは闘奴が逃げない為の人質だ。

「良い物は食えるし金ももらえる。でも、ほとんどの奴は1年位で命を落とす。」

ふと、1人の男が近づいてきた。

「お前、エルグだよな?」

「!お前は…」

エルグは眉間にしわを寄せた。

「よくここに来られたな。」

男の目つきは険しかった。

「…もう一度会わなきゃならない人がいる。」

「マーラの事か?お前には会わないだろうよ。」

「……」

「マーラも俺達もお前のやった事を今でも忘れちゃいない。」

それだけ言って男は去って行った。

エルグは黙って立ち尽くしていた。

「お兄ちゃん。」

ルルグが声をかけた。

「…あ、ああ、大丈夫だ。…ここでじっとしていても仕方ない。行こう。」

エルグが我に返ったように言った。

「いいのか?」

セレがきいたのはそれだけだった。『今のは誰だ?』とは言わなかった。

「ああ。ピアリが先だ。」

「…わかった。それなら急ごう。もう近い。」

セレは足を速めた。

エルグはルルグを背負って歩き出した。