緑の風と小さな光 第2部

「とにかく行きます。」

セレは紫色のペンダントを取り出し、短い呪文を唱えた。

「南西の方向にいるな。」

ペンダントトップが向いている方だ。

「あんたは魔法使いなのかい?」

アンナは珍しいものを見る目で言った。

「ええ。」

「初めて会ったよ。スザールにはほとんどいないからね。何処から来たの?」

「ロストーク。」

「…ロストーク…芽生えって意味だよね。いい国だって聞いてるよ。王都の運河は見事だそうだね。」

「良くご存知ですね。ええ。美しい所です。」

「この国もロストークみたいになればいいのにねぇ。」

「スザールも国土は豊かだ。きっと良くなります。…こちらの国王陛下は今はどうしていらっしゃるのでしょう?」

「さあねぇ。スヴィアが幅を利かせるようになってからは、国王様を見たことが無いね。」

「お后や御子息は?」

「幸か不幸かまだ独り身だったんだよ。まだお若いしね。ちょうどあんた位だね。」

あんた位、と言ってもセレは実年齢よりも少し上に見えるから、25, 6才といったところか。

「先王が早くに亡くなったから、幼い頃から王位についていたんだ。」

エルグが言った。