理事長室にて。



 空の絨毯には、筆を雑に扱い描いたような灰色のもやがある。


 曇り空と、ここではそう言うんだっけ。



 「黎(れい)、会いたかったよ。愛しい君がここに来てくれて、とても嬉しい」



 愛想のいい笑みを張り付けて、彼から握手を求められる。


 媚びへつらうこの鬱陶しい人は私の叔父だ。


 対面したのはこれが初めて、そのくせ親しいアピールを出してくるこの人に私はニッコリと笑い返す。



 「・・・そうですか、私もお会いたかったです」



 適当にそう言ってやり過ごす。


 誰かが理事長室の扉をコンコンと叩く音がした。