それはオクルコトバ。

かけがえのない君が僕にオクルコトバ。

ああ、なんて優しい嘘なんだろう。

僕は知っている。

キッチンに立つ君がはなうた交じりに料理を作る姿を。

庭で洗濯物を干す君が陽のひかりの匂いを気持ち良さげに吸い込んでいることを。

君はどうしてそんなにも強い女性《ひと》なんだろう。

正直、僕は君のいなくなった世界を受け入れることは出来ない。

君のいないキッチンも。

君のいない庭も。

今、こうして眠りについた君の寝顔を見ているだけでも呼吸が止まりやしないか、脈打つ音が弱くなってやしないかと思うだけで僕の手は震えるよ。

なのにまたきっともし明日も目覚めたなら君は言うだろう。

終わりにしましょう、私達、と。

だから、

だから僕も嘘をつく。

君の1000000分の1にも及ばない下手くそな嘘をつくよ。

ーーー君とは終わりだ、別れよう

これが僕から君へのオクルコトバ。

誰よりも大切な大切な君へって、

それは心の中でそっと呟くよ。