「あなたに希望は渡しません。希望は俺と一緒に住むと決めたんです。これからだってずっと…」
そこまで言いかけ、一月君は言葉をつまらせ、唇をかんだ。その顔からはいつものクールさは消え、今にも泣きそうだった。
「君の気持ちは分かる」
「分かるわけない!」
「分かるさ。だが、君のそれは依存だ。いつか破綻する。そして、希望のことを本当に思うなら君は希望にすべての決定を委ねるべきだ」
お父さんは立ち上がる。
「明日の朝九時に飛行機は飛ぶ。俺と一緒に来るなら、空港に来い」
お父さんはそう言い残して、家を出た。
一月君はイライラと頭をかきむしり、ソファーに座った。
「行くわけないよな? 希望。約束したもんな。俺とずっと一緒にいて、俺と結婚するって」



