一月君と私は驚きのあまり、言葉を失う。


「でも、どうして?」


お父さんはタバコを取り出し、一服した。


「勘違いしないでほしい。俺は一月君とここで暮らしていることに反対しているわけじゃないんだ。ただ個人的な思いとして、希望とこれ以上、離れて暮らすことが俺にはどうしても耐えられない」


お父さんの厳しくも、優しい目が私の顔にむけられる。


「思えば今まで、俺は希望に父親らしいことをしてやったことがなかった。いつも妻に命令され、従ってばかりだったからな。だがその妻も死んだ以上、ようやく俺は希望と向き合う覚悟ができたんだ。だから頼む…」


「急にそんなこと言われても困るよ。海外に言ったら、日本の友達にも会えなくなるし。それに…」


私は一月君の方を見る。


呆然としていた一月君は私の視線に気づくと、私の方をむいて、弱々しい顔で首をよこにふった。