一月君が他校に転校した理由。


それはまた、部活動としてバスケを再開するためだった。


一月君が入ったのは、家から電車で通える距離にある私立高校。そこは、一月君が一年の時、スカウトされた大学の付属高校で、バスケ部もかなりの強豪だった。


「いけー! 頑張れ! 一月君!」


盗撮の事件から一ヶ月がたったある日曜日。


私と志芳ちゃん、愛子ちゃんは一月君の高校の試合を見に来ていた。


一月君はすっかり新しい高校に馴染み、たった一ヶ月でレギュラーになっていた。


人間関係も良くて、前みたいに嫉妬されることもなく、むしろ、実力者として尊敬されているらしい。


「うわっ! また一月君がシュート決めたよ!」と私。


一月君はジストニアも嘘みたいに克服していた。


「あんな球遊びの何が面白いのかしら?」と志芳ちゃんは試合中なのに本を読んでいた。


相変わらずの志芳ちゃん。


対する愛子ちゃんは、


「ねぇねぇ君、可愛いね。一緒にお昼行かない?」


「ダメー! 愛子はみんなの愛子なのぉ!」


なぜか応援席でナンパされていた。