ボールはきれいな放物線を描き、ゴールに吸い込まれていった。


「なんか、目が覚めたよ」


一月君は汗をぬぐい、蓮君をにらむ。その表情は、さっきまでの弱々しさが消え、鋭いナイフのようだ。


「俺はもうひとりじゃない。例え仲間に裏切られた過去があろうとも、俺には絶対に俺を裏切らない希望がいる」


それから、一月君は圧倒的な強さをみせた。


過去のトラウマによるジストニアは嘘のように消え、蓮君ですら、寄せつけないほどの動きで、次々と勝利した。


気がつけば、4対4。


そして、五戦目。一月君が攻める番。


一月君の放たれたシュートを蓮君は何もできずに見送る。そしてシュートはあまりにも美しく、決まった。


4対6。試合は一月君の勝利だ。