「ごめん! 蓮君、私のせいで……血が!」
私は泣きながら、蓮君の腕に飛びついた。
「大丈夫。こんなのかすり傷さ」
「でも、バスケで使う大切な手なのに…」
朝にはバスケをしていた蓮君の手は、血で真っ赤に染まっていた。
「僕にとって、希望よりも大切なものはないよ。それより希望が無事でよかった」
私は顔をくしゃくしゃにしながら、思わず蓮君に抱きついた。
「ごめんね、ごめんね…」
と何度も私は繰り返した。
「愛子、この人知ってる」
取り押さえられた女子生徒を見て、愛子ちゃんが言う。
「松川恵三(まつかわえみ)先輩。委員会で一緒の人だよ」
恵三さんは私をにらんでいた。恨みがこもった恐ろしい目だ。
ふいにその視線は蓮君に移った。するとなぜか少しだけ、恵三さんの口角が上がった。



