一月君の言葉に、ひとりでバスケの練習をしていた今日の姿が浮かぶ。


「友達から聞いたよ。去年までバスケ部だったんでしょ。それもすっごくうまかったって。それに、今日だって…」


私が言うと「なんだ。見られてたのか…」と一月君は半笑いで言った。


「なんで辞めちゃったの? バスケ?」


私の問いかけに、一月君は口をつぐむ。


「無理に答えなくていいよ。私にしてあげられることは、きっと限られてるし。

だけどもし、私に話して、少しでも一月君の辛さを和らげてあげられるなら、私は、一月君の過去を知りたい…」


「胸糞悪くなるだけだ。希望も…」


「いいよ。それでも…」


「ほんとおまえは…」と一月君は、さらに私を抱く腕に力をこめた。


「優しすぎるよ…」