「一月君のことを好きになったら、もし、私が付き合ったら、あの男の子のこと、裏切ることになっちゃうのかな?」


昼間に屋上で見た光景。


あれはきっと、
私が失っていた記憶の一部だ。


私が誰かに襲われたとき、銀髪の男の子が私を守ってくれた。その記憶がよみがえったんだと思う。


自分を犠牲にしてでも、私を守ってくれた男の子。


そんな子がいつか私を迎えに来ると約束してくれた。


なのに私は、男の子のことを忘れてしまっているうえに、一月君のことを好きになってしまっている。


もし今、迎えに来た男の子が、そんな私を見たら、裏切られたって思うのかな?


そんなことを思いながら、例のネックレスを握る。


涙が一筋、流れてしまった。


「希望、ちょっといいか?」


部屋の扉が開く。一月君が入ってきた。


「どうしたの?」


ベッドにもぐり、涙をふいて、私が言う。


「やっぱ、希望がいないと眠れない。
今日も一緒に寝ていい?」