「桜花」
川野くんは、黒々とした目を桜花ちゃんに向けた。
「お前は、俺だけの女になってほしかった」
「修二くんだけの……」
桜花ちゃんはきっと、こんな川野くんを見たことがなかったんだろうな。彼女はきっと、暴力を振るう時にしていた、彼の険しい顔をよく覚えているんだろう。
まるで今までにないものを見たかのように、目を見開いて固まっている桜花ちゃん。そして、淡々と話す川野くん。
「俺、お前に何回も告白した時さ、一途に考えて大切にするからって思った。けど、お前はそれを分かってないような感じがしたんだよ」
「だからって、殴ったの……?」
警戒している表情をして、知世ちゃんは聞いた。
「あんたには関係ないことだよ」
「関係はあるよ。あたしと沙織ちゃんは、桜花の友達。友達が不安な思いしている時に、あんたは助けたいと思わないの?」
まっすぐと見つめながら、知世ちゃんは聞く。
「一応聞くけどさ、桜花に何度も振られた後に自分はやっぱり好きになってもらえないんだとか思わなかったわけ?」
「それは確かに思ったけどよ、やっぱ諦めたくなかったし、桜花しか見えなくて……」
彼は、髪をかきむしりながら言った。
「だけど、じゃあなんで殴ったりなんかしたの?」
「俺……それ以外に何すればいいか分からなかった」
それって、分からなかったで済ませられることなのだろうか。



