アルベルティーナはお酒はあまり得意ではない。成人してから飲んだのも、付き合いで数回というくらいだ。だけどルイの蜂蜜酒は美味しいと思った。身体の中が温まってほぐれてゆくように感じる。


「美味しい……」

「気に入って頂けて良かったです。よろしければこちら、差し上げますよ。就寝前に飲むと良いそうですから」


 ルイが瓶を差し出すと、それを横からかすめ取る手が。


「――――へえ? そんなに旨いなら、俺にも飲ませてくれよ」


 いつの間にかファビオが二人の後ろに立っていた。彼は奪い取った蜂蜜酒をテーブルのグラスになみなみと注ぎ、一気に煽る。


「これは…………まあ、甘くて旨いが、俺には少し物足りないな」


 そんな嫌味を言いながら瓶をルイに返したが、中身はもう半分に減っていた。


「せっかく女王陛下に差し上げようとしたのに、こんなに飲んでしまって……! 貴方は疲れてなんていないでしょう!」


 怒ったルイが声を荒げたので、アルベルティーナはまたか、と思い仲裁に入る。今日は一日中こんな感じで、だから疲れているというのに。どうやら二人にその自覚は無いようだ。


「お気持ちだけで大丈夫ですよ、ルイ王子。ありがとうございます、それだけあれば充分です」


 アルベルティーナは優しく微笑みながら受け取ろうとしたが、ルイは納得いかないようだった。まだファビオを睨みつけながら、瓶を抱えている。