一人でも煩わしかったのに、それが二人になってしまった。翌朝から、二人の王子によるアルベルティーナ争奪戦が起こった。
食事は三食いつも三人一緒に。アルベルティーナが公務の時は、ファビオは主に湯殿で過ごし、ルイはティールームでお茶を飲み。彼女が少しでも時間が空くと、まるで恋人か婚約者のようにぴったりと付きまとう。
合間にちょこちょこ二人がいがみ合うので、アルベルティーナは三日と経たず、一日でうんざりしてしまった。
数日経つ頃にはすっかり疲れ果ててしまい、食事を前に思わずため息を零すと、それを目ざとく見つけたルイが席を立った。そしてすぐに戻って来ると、彼女に飲み物の入った瓶を差し出した。
「だいぶお疲れのようですね。よろしかったらこちらをどうぞ……」
葡萄酒の瓶のように見えるが、それよりは少し小さい。そのコルクを開け、ルイは中の液体をグラスに少し注いだ。
一体誰のせいで疲れているのか分かっているのか、とちらりと思ったが、アルベルティーナは素直にそれを手にした。瓶から注がれた琥珀色の液体が、光を反射してキラキラと美しかったからだ。
「これは、何ですか?」
「僕の国から持参した、蜂蜜酒です。ヘーメル国の特産品で、疲労回復に効くんですよ」
ふわりと香る甘い匂い。一口飲むと、やはり甘いが何処かスッキリした後口。だけど濃厚だ。