「グレてやろうかってあの時は本当に思ったんだよ。だけど、そんな勇気もないし。八神くんの事もそう。どんどん八神くんへの気持ちは膨らむのに私なんかが…って、あの時、八神くんに言われた通りだよ。今思うと独りよがりのネガティブモンスターな私って確かにキモかった。」

自然と笑いが込み上げてくる。

「そんな自虐もういいよ。色んな事があったけど今こうして佐奈は僕の腕の中にいる。」

「うん…だね。」

「ただ…、」

抱きしめていた手を緩めると八神くんは独り言のように話しだした。

「やっぱり僕から言いたかったなぁ。明日、卒業式の後、告白しようと思ってたんだよね。卒業するんだしさすがに周りもとやかく言わないだろうって。それに振られたとしても顔を合わすこともないしって思ってた。」

「まさか、八神くんを振るなんて…。」

考えられないよ。

きっと…

どんな形であっても私は八神くんに恋をしていたと思う。

八神くんが差し伸べてくれた手をきっと掴んだと思う。

それで、

それでね、

「八神くん…」

「ん?」

背筋を伸ばしちゃんと八神くんの目を見る。

それを見て八神くんも姿勢を正して私の目をちゃんと見てくれる。