毎日、失恋。

「バカじゃないの。こんな濡れたままで何してんだよ。あーもう、ハンカチじゃ追いつかないじゃん。」

自分のハンカチを使ってゴシゴシ頭を拭いてくれる八神くん。

ふいに手が止まるとーーー

「もしかして…高橋さんがびしょ濡れなのって僕のせいだったりする?」

頭をずっと下げてるから八神くんの表情はわからない。

だけど…

きっと自分の事のように心配しているに違いない。

そんな八神くんの優しさに甘えてしまえたらーーー

だから、

「違うよ。水飲み場の蛇口が壊れてたみたい。飲もうとしたら勢いよく掛かっちゃって…」

本当の事を言うわけにはいかない。

勘違いしちゃいけない。

私だけが特別じゃないのだから。

「ありがとう。もう大丈夫だから…」

「だけどどうすんの?そんな濡れたままで。まだ髪も乾いてないじゃん。」

「本当に大丈夫だから…そうだ、先生に、岡崎先生に車で送ってもらうよ。」

適当な事を言って誤魔化す。

「だけど、高橋さん先生のことーー」

「ごめんね、もう本当に大丈夫だから、そっとしておいて。お願い…」

それ以上、八神くんは何も言わなかった。

これでいいんだよね。

これで。

元に戻るだけ。

同じクラスってだけで特に会話も何もなかった頃に戻るだけ…

私は一度も振り返ることなく教室を後にした。