毎日、失恋。

「えっ…」

「だって、今後禁止なんでしょ?また一緒に寝なきゃ佐奈の寝顔見れないじゃん。」

「あっ…」

昨夜からの色んなあんなことやこんなことが思い出され一瞬で顔が熱くなる。

「いや、それは…その…」

「佐奈、ちょうどいい機会だから言うけど。」

と、急に真面目なトーンで八神くんが言うから自然と私も背筋が伸びる。

「なに?」

「佐奈…、卒業式の日、あの時はその場のノリで言ったけど、覚えてる?一緒に暮らす?って言ったこと。」

卒業式の日…

「うん、覚えてる。」

冗談っぽく言ってたけどあの日の事はちゃんと全部覚えてる。

「そっか。じゃあさ、僕達、本当に一緒に暮らさない?」

「い、一緒に…?」

「そう。ねぇ、佐奈。最近、僕に隠れて部屋探しをしてるでしょ?」

「嘘…なんで知ってるの?」

「やっぱりね。ちょっと今、カマかけた。ごめん。試すような事して卑怯だったね。だけど…佐奈のことだからきっと家を出ること考えてるんじゃないかなって、そう思ったんだ。なのに中々、僕に話さないし。」

確かに…、二十歳になったのをきっかけに私はこの家を出ようと考えていた。

結婚した先生とお姉ちゃんはこの家に住むことに決めている。

お姉ちゃんは私を一人には出来ないって言う。そして先生も家族が増えるのは良いことだからって一緒に暮らす気満々だし。

その気持ちも分かる。

私だって家族が増えて嬉しいって心から思えるようになった。

だけど…

新婚生活の邪魔をしたくない。

て言うか、新婚さんと一緒に暮らすなんて何かと気を使うじゃない?

もちろんそれだけじゃない。

自分を試してみたかった。

お姉ちゃんに守られてきたから、これまでずっと。

お父さんとお母さんを事故で亡くしてからお姉ちゃんは私の親代わりとして一生懸命働いて私を育ててくれた。

お洒落もせず、友達とも遊ばないしそれに夢も諦めた。

だから今度は私がお姉ちゃんを支えたいと思ったんだ。

これまでお姉ちゃんに守られてきた私がお姉ちゃんを支えたい。たった一人のお姉ちゃんだもん。

その為には自分に自信をつけたくて。

お姉ちゃんの支えになれるようこの家を出て頑張ってみたくなったんだ。