毎日、失恋。

「はぁ?なんでそんな話になるの?」

心から驚いた顔で八神くんが言う。

「だって…さっきも…えっと…抱き、だ、抱きしめてもらった時…わ、私は…えっと…キ、キ、あー、やっぱりもういい。じゃ、もう寝るね、おやすみっ。」

そのままリビングを出て行こうとしたら腕を引っ張られその勢いで八神くんの胸に飛び込んだ。

「ほんっと、バカ。」

口ではそう言いながらもとても優しく抱きしめてくれる八神くん。

「なんで、バカなのよ。変なのは八神くんじゃない。雷や停電くらいで泣き出す私の事なんて面倒に思ってるんでしょ?離してっ。言うこと聞いて二階で大人しく寝ます!」

離れようとしたらさらに強く抱きしめられた。

「ああ…もぉ…ったく、どうしたらいいんだよ…」

なんとも情けない八神くんの声が聞こえた。

「あのさ、佐奈、わかってる今の状況。」

漸く腕を離してくれたもののなにやらご立腹な感じの八神くん。

「えっと…、ゲリラ豪雨になって雷が鳴って…それから停電?」

「じゃなくて…いや、まぁ、そうだけど。今、ここ、ここの今の状況!佐奈が心配で僕、来たよね?」

「う、うん…」

「つまり佐奈は一人で心細かった。そこへ彼氏である僕が格好良く登場!」

自分で格好良くとか言っちゃってる。

でも確かに格好良かったけど…

「聞いてる?」

「は、はいっ。き、聞いてます。聞きます。」

思わずピシッと背筋が伸びる。